猫の歯が折れたらどうする?|治療法や受診の目安について獣医師が解説

「猫の歯が折れたらどうしたらいいの?」
「猫の歯が折れる原因は何?」
「猫の歯が折れたときの治療法は?」
猫の歯についてこのような疑問を抱えていらっしゃる飼い主様は多いのではないでしょうか。
猫の歯は丈夫そうに見えますが、さまざまな原因で折れてしまうこともあります。
今回は猫の歯が折れたときの治療法や受診の目安について解説いたします。
ぜひ最後までお読みいただき、猫の歯が折れたときの対処法を学んでいただければ幸いです。
猫の歯が折れる原因
猫の歯が折れる主な原因には
- 高いところからの落下
- 交通事故やケンカなどによる外傷
- 歯周病
- 歯の吸収病巣
などがあります。
若い猫では、事故や外傷によって犬歯が折れるケースが比較的多くみられます。
犬歯とは、猫の口の上下に鋭く長い牙のように生えている4本の歯のことです。
高齢の猫では歯周病によって歯を支える組織が弱くなっていたり、歯の吸収病巣によって歯そのものが壊れやすくなっていたりすることがあります。
猫の歯の吸収病巣は、歯を構成する組織が少しずつ吸収されていく病気です。
猫の歯は見た目には小さな欠けにしか見えなくても、歯の根元まで病気が進んでいることがあります。
猫の歯が折れたときの症状
猫の歯が折れた場合には
- よだれが増える
- 口を気にして前足で触る
- 硬いフードを嫌がる
- 口から出血する
- 歯の色が変わる
などの症状がみられることが多いです。
猫は口を開けていることが少ないため歯が折れているかどうかわかりにくいですが、これらの症状が見られる場合は歯が折れているかもしれません。
特に注意したいのが、折れた部分から歯の内部にある歯髄が露出している場合です。
歯髄には神経や血管が通っているため、露出すると強い痛みを感じたり、細菌感染を起こしたりする可能性があります。
見た目だけでは歯髄が露出しているか判断しにくいこともあるため、歯が欠けていることに気づいたら一度動物病院で確認してもらいましょう。
猫の歯が折れたときの受診の目安
猫の歯が折れていることに気づいたらできるだけ早く動物病院を受診することをおすすめします。
特に
- 歯の中心に赤色や黒色の点が見える
- 出血している
- 強く痛がっている
- 食欲が落ちている
- 顔が腫れている
- 膿や強い口臭がある
といった場合は、歯の内部まで損傷している可能性が高いです。
歯髄が露出した状態を放置すると、歯の根の先まで細菌感染が広がり
- 根尖性歯周炎
- 根尖膿瘍
を起こすことがあります。
これらの病気で感染が進むと、顔が腫れたり皮膚に穴が開いて膿が出たりすることもあるため、早めの治療が大切です。

猫の歯が折れたときの治療
猫の歯が折れたときの治療は
- 歯が折れた深さ
- 歯が折れてからの経過時間
- 歯の神経への感染の有無
などによって変わります。
治療方法は
- 保存修復
- 歯内療法
- 抜歯
などです。
それぞれを詳しく解説いたします。
保存修復
歯の表面だけが欠けた場合では、欠けた部分を歯科材料で保護する保存修復が行われます。
歯の一番外側を覆っているのは、丈夫なエナメル質です。
歯の表面が折れてるとエナメル質の下の脆い象牙質が露出し、すぐに歯髄までダメージが広がってしまいます。
保存修復では露出した象牙質をレジンで覆って保護する処置が行われます。
歯内療法
歯内療法とは、抜歯をせずに歯髄を処置して歯を残す治療法です。
歯内療法には
- 歯髄覆罩(しずいふくとう)
- 根管治療
などがあります。
歯髄覆罩とは歯髄を生きたまま残し、薬剤などを使って覆う治療法です。
折れた深さがかろうじて歯髄まで達していない場合や、歯髄まで達していても歯が折れてからの時間経過が短い場合に行われることがあります。
歯髄覆罩が適応される時間の基準はさまざまですが、成猫では歯が折れてから48時間以内、1歳半未満の若い猫では2週間以内が目安です。
根管治療は回復不能になった歯髄を除去して歯を保存するための治療です。
折れた深さが歯髄まで達していて時間が経ち、歯髄が壊死している場合などに選択されることがあります。
抜歯
抜歯は歯内療法では治療が困難な場合や、歯の根っこの部分まで深く折れてしまっている場合に行われます。
元々歯周病があり、歯が折れたことで感染が広がるリスクが高い場合にも抜歯が行われることが多いです。
歯は失われてしまいますが確実に痛みと感染リスクを取り除くことができます。
猫の歯が折れないための予防方法
猫の歯が折れる事故を完全に防ぐことは難しいですが、いくつか注意できることがあります。
硬すぎるおもちゃや骨などを噛ませることは避けましょう。
歯よりも硬いものを強く噛むと、歯が欠けたり折れたりする原因になります。
室内で高い場所から落下しないように環境を整えることも大切です。
歯周病や歯の吸収病巣によって歯が弱くなることもあるため、定期的に口の中をチェックしましょう。
- 歯ぐきが赤い
- 口臭が強い
- 食べ方がおかしい
といった変化があれば、早めに歯科検診を受けることをおすすめします。

まとめ
猫の歯は外傷や硬いものを噛んだことだけでなく、歯周病や歯の吸収病巣によって折れることがあります。
折れた部分から歯髄が露出すると強い痛みや感染につながるため、放置はおすすめできません。
猫の歯が折れた場合の治療には
- 保存修復
- 歯内療法
- 抜歯
などがあり、歯の状態に応じて適切な方法を選択します。
当院では歯科診療に力を入れています。
歯科用X線検査などを用いて、歯の表面だけでなく歯の根元まで詳しく検査し、それぞれの猫に最適な歯科治療の提案が可能です。
「猫の歯が折れているかもしれない」
「歯が欠けているけれど様子をみていいかわからない」
このような場合は、お気軽にご相談ください。


