猫の歯周病と心臓病の関係|歯磨きは心臓病のリスクを下げる?獣医師が解説

「猫の歯周病を放置すると心臓にも悪いの?」
「歯の病気が全身に影響するって本当?」
このような疑問をお持ちの飼い主様も多いのではないでしょうか。
猫の歯周病は、歯垢や歯石に含まれる細菌によって歯肉や歯を支える組織に炎症が起こる病気です。
進行すると口の中だけではなく、慢性的な炎症が心臓をはじめとする全身の臓器に影響する可能性も考えられています。
今回は猫の歯周病と心臓病の関係についてわかりやすく解説します。
ぜひ最後までお読みいただき、日々のデンタルケアのモチベーションを高めていただければ幸いです。
猫の歯周病と心臓病の関係
近年の研究では、猫の歯周病と心臓の異常との関連が報告されています。
2024年のイギリスの研究では、歯周病のある猫は歯周病のない猫と比べて、不整脈や心雑音がみられる可能性が約2倍以上高いという結果でした。
歯周病が原因で心臓病になったことが証明されたわけではありませんが、その可能性はあるということです。
犬や人では歯周病と心臓病との関連について多くの研究があります。
猫でもこれからさらに研究が進むと歯周病と心臓病の関連性が明らかになってくるかもしれません。
なぜ歯周病が心臓に影響する可能性があるのか
歯周病が進行すると、歯周ポケットの中で強い炎症が続きます。
炎症によって歯肉のバリアが傷つくと、口の中の細菌やその成分が血液中へ入り込む「菌血症」が起こる可能性があります。
また、歯周病によって作られる炎症性物質が全身をめぐることで、血管や心臓に炎症を与える可能性があるといわれています。
歯周病と心臓病を考えるうえで知られている病気が細菌性心内膜炎です。
細菌性心内膜炎とは、血液中に入った細菌が心臓の弁などに付着し、感染や炎症を起こす病気です。
重度の歯周病によって菌血症が引き起こされ細菌が心臓の弁に付着すると、細菌性心内膜炎につながる可能性があります。
歯周病は心臓以外にも悪影響を与える?
歯周病は心臓以外にも全身の様々な臓器に影響を与える可能性があります。
歯周病によって影響を受けると考えられている主な臓器には
- 腎臓
- 肝臓
- 肺
などがあります。
腎臓は血液を濾過する臓器で、肝臓は血液を解毒する臓器です。
そのため腎臓や肝臓は血液中の細菌や炎症物質の影響を受けやすいです。
重度の歯周病による慢性的な炎症が続くと腎臓や肝臓に負担がかかり、機能の低下につながることもあります。
口の中の細菌を誤って吸い込むと誤嚥性肺炎を起こすことがあります。
特に、飲み込む力が弱くなる高齢の猫では注意が必要です。
歯磨きを続けて口腔内の細菌を減らすことは肺炎予防にも役立つと考えられています。

猫の歯周病の予防
歯周病が猫の心臓病や全身の臓器に影響を与えるかもしれないと聞くと怖いですよね。
日頃からのデンタルケアを行うことで猫の歯周病は予防することができます。
猫の歯周病を予防するうえで最も重要なのは、歯垢をためないことです。
- 歯磨きを習慣にする
- 口臭や歯肉の赤みを確認する
- 歯石が増えていないかチェックする
- 定期的に歯科検診を受ける
などを心がけましょう。
猫の歯についた歯垢は7〜10日放置すると歯石になるといわれています。
歯石がつかないようにするために歯磨きはできれば毎日、最低でも3〜5日に1回は行うことをおすすめします。
すでに歯石や深い歯周ポケットが形成されている場合は、自宅ケアだけで改善させることはできません。
全身麻酔下で歯科用X線検査やスケーリング、必要に応じた抜歯などが必要になります。
心臓病の猫でも歯周病治療は必要?
歯周病がひどくなると口の痛みから食欲や元気がなくなってしまうことがあります。
心臓病がある猫でも、歯周病による痛みや感染を放置することはおすすめできません。
ただし、歯石除去や抜歯などの歯科治療には全身麻酔が必要です。
心雑音や心筋症がある猫では、治療前に
- 身体検査
- 血液検査
- 胸部X線検査
- 心エコー検査
などを行い、麻酔リスクを評価する必要があります。
「心臓病があるから絶対に歯科治療はできない」というわけではありません。
心臓の状態と歯周病の重症度を比較しながら治療が選択されます。

まとめ
歯周病による炎症や口腔内細菌が心臓に影響する可能性が考えられているため、口の中を健康に保つことは全身の健康管理という意味でも重要です。
「猫の口臭が強くなった」
「歯ぐきが赤い」
「歯石がたまっている」
このような変化がみられた場合は、早めに歯科検診を受けましょう。
当院では歯科診療に力を入れており、歯科用X線検査などを用いて歯ぐきの下まで詳しく評価し、猫の状態に合わせた治療をご提案しています。
猫の歯についてお困りの際はぜひ当院にご相談ください。


