猫の歯の吸収病巣|歯が壊れていく病気について獣医師が解説

猫の歯の吸収病巣|歯が壊れていく病気について獣医師が解説

カーテンと椅子の間に座って上を見上げるキジトラの猫

「猫の歯ぐきが赤くなっている」
「歯が欠けているように見える」
「ご飯を食べるときに痛そうにしている」
猫にこのような症状がある場合、歯の吸収病巣という病気が隠れているかもしれません。

猫の歯の吸収病巣は、歯が少しずつ壊されていく病気です。
進行すると歯の内側にある神経まで影響が及び、強い痛みにつながることがあります。
猫は口の痛みを隠すことが多いため「食欲があるから大丈夫」とは限りません。

今回は猫の歯の吸収病巣をわかりやすく解説します。
ぜひ最後までお読みいただき、猫の歯の健康を守る知識を深めていただければ幸いです。

目次

猫の歯の吸収病巣とは

猫の歯の吸収病巣とは、歯を壊す働きを持つ破歯細胞が必要以上に働き、歯が少しずつ失われていく病気です。
歯の表面や根元が徐々に壊され、病気が進むとその部分が骨に似た組織へ置き換わります。
そのため「歯が骨に変わっていく病気」と説明されることもあります。

歯の吸収病巣は猫で比較的よくみられる歯科疾患で、年齢が上がるほど発症しやすいです。
2歳未満ではまれで、4〜6歳頃から多くなり、10歳以上では約7割の猫が歯の吸収病巣に罹患しているとされています。   

猫の歯の吸収病巣の原因

猫の歯の吸収病巣がなぜ起こるのかは、現在も完全にはわかっていません。
これまで

  • ビタミンDやカルシウムなどの栄養素の乱れ
  • 歯周病や歯肉炎
  • 遺伝的な体質

などとの関係が研究されてきました。
骨や歯の主成分はカルシウムで、ビタミンDはカルシウムを体内に吸収するのに必要なビタミンです。
カルシウムやビタミンDが不足すると歯の構造が弱くなる可能性があります。
多ければいいというものではなく、ビタミンDの過剰摂取は逆に歯の吸収病巣を発症しやすくするという報告もあります。
ビタミンDは猫の体内で合成できず、食事から摂取しなければなりません。
そのため猫のフードにはビタミンDが配合されています。
しかし多くのウェットフードには、推奨される量よりも多くのビタミンDが含まれています。
ウェットフード中心の食事は猫の歯の吸収病巣の発症リスクをあげる可能性が高いです。

歯周病や歯肉炎などの口腔疾患があると、炎症反応によって破歯細胞が活性化され、吸収病巣が悪化しやすいと考えられています。

また特定の猫種や家系で吸収病巣の発症が多いという報告もあり、吸収病巣には遺伝的な要因が関係しているともいわれています。

猫の歯の吸収病巣はひとつの原因だけで発症する病気ではありません。
さまざまな要因が重なって発症すると考えられています。

大きなあくびをする茶トラの猫

猫の歯の吸収病巣の症状

歯の吸収病巣では、病気が進むほど痛みが強くなる可能性があります。
代表的な症状は

  • 歯ぐきが赤く腫れる
  • 食べるスピードが遅くなる
  • ドライフードを食べなくなる
  • 食事中に急に鳴く
  • 歯をカチカチさせる

などです。

口の中を観察すると歯の表面が欠けているように見えたり、歯ぐきが歯を覆うように盛り上がって見えたりすることもあります。
ただし猫は口の痛みを隠す傾向があり、吸収病巣が進行していても普通に食事をしている猫も多いです。
そのため、症状がないから歯に問題がないとは限りません。

この記事を読んで気になった方へ 気になる症状があれば一度ご相談ください ご予約はこちら

猫の歯の吸収病巣の分類

歯の吸収病巣は、歯の根の状態と病気の進み具合によって分類されます。
この分類によって治療方法が変わります。

タイプ別の分類

歯の吸収病巣は2つのタイプに分けられます。
タイプ1は、歯の根の形が残ったまま歯の一部が壊れていく病態です。
吸収病巣と歯周病を一緒に起こしているケースもあります。

タイプ2は、歯の根が徐々に吸収され、骨のような組織へ置き換わっていく病態です。
1本の歯の中に両方の特徴が混ざるタイプもあります。

ステージ分類

病気の進行度は1〜5段階に分けられます。

ステージ1

歯の表面に小さな変化がある

ステージ2

歯の内側まで病気が進んでいる

ステージ3

歯の神経まで影響が及んでいる

ステージ4

歯の大部分が破壊されている

ステージ5

見えている歯がほとんどなくなっている

歯の吸収病巣のステージは口腔内環境が悪いと進行しやすいです。
歯垢の蓄積や歯周病による歯肉炎などによって破歯細胞が活性化することで、歯の破壊が進むといわれています。

猫の歯の吸収病巣の検査

猫の歯の吸収病巣の診断では

  • 歯周エキスプローラー
  • 歯科用X線検査

が重要です。
まず歯周プローブと呼ばれる専用の器具で歯の表面を触り、吸収されている部分がないか確認が行われます。
これだけでは歯ぐきの下や歯の根だけに病気がある場合は見ただけではわかりません。
猫の歯の吸収病巣では歯科用X線検査で歯の根まで確認することが非常に重要です。
歯の根が残っているのか、骨に置き換わっているのかを確認することで、適切な治療方法を選択できます。

猫の歯の吸収病巣の治療

猫の歯の吸収病巣の治療には

  • 抜歯
  • 歯冠除去(歯根の保持)
  • 鎮痛薬や抗菌薬の内服
  • 経過観察

などがあります。
歯の吸収病巣そのものを根治させる治療はないため、これらの治療の目的は痛みの原因となっている歯を適切に処置することです。

抜歯

歯の根がしっかり残っているタイプ1の吸収病巣では、歯を根元から抜く治療が基本になります。

歯冠除去

歯の根がすでに骨のような組織へ置き換わっているタイプ2の吸収病巣の場合には、歯ぐきより上に見えている「歯冠」の部分だけを取り除く方法があります。

歯周病や歯の周囲の感染がある場合は、感染を広げる可能性があるため歯冠切除は行われません。

鎮痛薬や抗菌薬の投与

強い痛みがあったり歯科手術ができない場合は、痛みを和らげるために鎮痛薬を投与することがあります。

また、歯周病などによる感染が疑われる場合に抗菌薬が使われることもあります。

経過観察

病態がごく初期で痛みがなく、歯の根だけに変化がみられるステージ1の吸収病巣の場合には、定期的に歯科用X線検査を行いながら経過をみることがあります。

ステージ5の吸収病巣では、歯の構造はほとんど全て骨のような組織に置換されており、痛みを感じることがないため無治療で経過観察を行うことが多いです。

大きなあくびをするキジ白の猫

猫の歯の吸収病巣の予防

猫の歯の吸収病巣を予防する確立された方法はありません。

しかし、何もできないというわけではなく

  • 定期的に歯磨きをする
  • デンタル用のフードやおやつを与える
  • 適切な栄養管理をする
  • 定期的な検査を受ける

などを行うことで吸収病巣の悪化を防ぐことができる可能性はあります。

栄養管理では、特にカルシウムやビタミンDがバランスよく含まれている食事を与えるのがおすすめです。

まとめ

猫の歯の吸収病巣は、猫によくみられる歯科疾患です。
歯が吸収され少しずつ骨に置き換わっていきます。
進行すると強い痛みにつながることがありますが、猫は口の痛みを隠すため発見が遅れることもあります。
「歯ぐきが赤い」
「歯が欠けて見える」
「食べ方が変わった」
「口を触られるのを嫌がる」
このような変化がある場合は、早めに歯科検診を受けましょう。

当院では歯科診療に力を入れており、歯科用X線検査によって歯ぐきの下や歯の根まで確認したうえで、それぞれの歯の状態に合わせた治療をご提案しています。
猫の歯についてお悩みの際はぜひ当院までご相談ください。

この記事を読んで気になった方へ 気になる症状があれば一度ご相談ください ご予約はこちら
  • URLをコピーしました!
目次